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139:パッヘルベルのカノンと日本人

2010/05/08 (Sat) 22:32
一風変わったカノンのアレンジを見た ↓


バンディと一緒に演奏しているのは韓国の天才ギタリストのソンハ(Sungha Jung)君。
いろんな音が出ているが、実はユニゾン。
ソンハ君ですら、この真剣な表情だから、かなり難しい曲だと思う。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

僕自身はカノンはあまり好きではない。
あまりにももてはやされすぎて、つまらなくなってしまった。
カノンといえばカノンの中間部の旋律が有名だが、
私にとってはベートーベンの『運命』の冒頭と同じように、
「音楽」ではなく「記号」と化している。

人間には記号化し、略式化するクセがある。 要約し、分断し、抽出する。
カノンで言えば、中間部の32分音符の旋律 (↓これ) だけ抜き出されることが多い。
20100508asss.jpg クリックで拡大します
この旋律を携帯電話の着信音にしている人もいて、
聞くたびに胸がムカムカするほどで....

最近はYoutubeの世界でカノンロックが大流行した。
カノンロックのオリジナルは台湾のJerryCだが、私はこっち↓のアレンジがお気に入り。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

カノンは、我々クラッシックファンの密かな楽しみにしていたかったのに.....、
なぜ、こんなに広まってしまったのか?
パッヘルベルの曲は、「カノンとジーグ ニ長調」以外にはほとんど知られていない。
私も、パッヘルベルのアンサンブル曲は5曲しか知らない。
しかし音楽史的には、パッヘルベルはオルガン奏者であり、オルガン曲が多く遺されている。
中でもニ短調のシャコンヌが有名だ。 ( 私はそれほどトキめかないが.....(-_-) )

↓ほとんど我が家の家宝となりつつある、ブクステフーデとパッヘルベルの名曲集
20100508bsss.jpg
○このCDは既に廃盤です。中古品はこちらで購入できます
こちらから、このCDのうちカノンとジーグだけを150円で購入できます。



カノンが多くの人々の耳に入った最初のきっかけは、フランス映画『夫婦』の
BGMだったとされているが、フランス映画『夫婦』なんて、ちょっとググっただけでは
ヒットしないほど無名の映画で、この説もなんだか疑わしい。

dicdicにとっては、ラジオから流れてくるカノンの原曲を聞いたのが最初だ。
その後、橋本祥路の「遠い日の歌」を中学校の合唱で歌った。

遠い日の歌  詞:岩沢千早 曲:橋本祥路


世間でカノンがもてはやされるようになったのも、この「遠い日の歌」が、
中学校の合唱曲として定着した頃からだった。

なぜ、日本でカノンが中毒のように広まってしまったのか考えてみた。

① ワンフレーズが長い旋律はウケがよくなる。
  上のカノンの旋律も然りだし、バッハのカンタータ147番のコラールも然り。
② でも曲全体の長さが短くて手頃
③ とっつきにくい「クラッシック」の中に、わかりやすいものが見つかったとなると、
  すぐそれに群がる日本人の習性
④ 「セレブ」とかいうニセ上流階級気取りが増殖
⑤ この旋律を (なぜか) 歌謡曲でも多用
⑥ アニメやドラマで積極的にクラッシックを使用 (庵野秀明など)


この曲が手頃なのは、われわれにとっても同じこと。
カノン以外にも手頃で素敵な曲はいっぱいある。
「この曲が世間に出たら....」と想像すると恐ろしくなる。
持てはやすのも良いが、原典を大切にしてほしいと思う。

20100508c.jpg
↑ ヨハン=パッヘルベル

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ちなみにパッヘルベルのカノンは 「三声のカノンとジーグ ニ長調」 という曲の
第一楽章で、3つのパートを基本とした素朴なカノンである。

↓の動画では、この3つのパートを実にわかりやすく表現している。

この動画のテンポは、ソステヌートの指定に対して速すぎるように感じられるかも
知れない。しかしカノンにはもともと、日本人が抱くようなロマンチックな情緒よりも、
演奏者の速弾きの技を楽しむ(曲芸に近い)意図があり、このスピードの方が、より
忠実と言えるかも知れない。
私には、日本で売られているCD盤の録音のテンポのほうが遅過ぎるように感じる。

この動画には、マイナーキー(ニ長調→ニ短調)のバージョンもある。
聴き比べると面白い。→< ニ短調バージョン>


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ある曲を本当に「知る」とか「好きになる」ということは、
その曲についてのみならず、音律やパターンの違いによる
表現力の広がりなどにも着目できるということであろう。
この種の着眼力の大切さは音楽だけに限らない。

安っぽい知識や、「名言」や、文学作品の「抜粋」を扱ったテレビ番組を
少し見たぐらいで何かを知った気になってしまう人は多い。

「知る」とか「好きになる」ということは、それについて
「十分に語ることができる」ということであり、他人と議論し、
議論を昇華させ、そこから全く新しい見解を作り出すことができる
ということだ。

既存の文化に親しみつつ、かつ創造的であり続ける生活を送りたい。

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テーマ : クラシック - ジャンル : 音楽


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